祭りが終わってからもしばらく、我々は島を離れることができなかった。心配していた台風は経路がそれてしまったが、約束通り、船は来なかった。しかし、焦って帰りたい気持ちもいつしか遠のいて、とくに何をするわけではないけれど、のんびりとした生活を日々楽しんでいた。ずっと温泉に浸かっているような感じというか、島の奥底から磁力のような強いエネルギーがじわじわ放出されているような気がした。いや、島自体が巨大な生き物といってもいいのかもしれない。とにかく、人も自然もパワフルでポジティブで、かつ、心地よい空気が充満している場所だと感じた。その昔、島を人目から遠ざけようとした平家の気持ちも、今なら少し理解できるかもしれないなぁ……とも。
情報のなさや文字感からそうとう怖い場所なのだろうと勝手に想像をしていたが、いい具合にイメージを覆されてしまった。本土から離れているがゆえに、時空を超えて受け継がれている和の心。過酷な環境がゆえに、つながりを大切にする人々。日本人が忘れていた美徳が、きちんと生活の中に息づいている。ここは外国でもなく、過去でもないのに、いつのまにか現代生活の中で捨て去ってしまっていた感覚が、島にはきちんと残っている。
皆既日食と悪石島。どちらも強烈なテーマだ。これまでも皆既が通るところでそう簡単な場所というのも無かったが、レヴェルが違う。実際、島で見れるのかとか見れないのか、足はあるのか云々……などの現実的な問題はともかく、それ以前に、この凄まじい引力を持つ島の性質を知り、まずはじっくり体感し、同調するコードを各人が自己の内部に見つけていくという作業が必要になってくる気がする。そうでないと、やわな現代人の心なんかこっぴどく錯乱され、再起不能になってしまうかもしれないから。
それでも確実に、皆既日食はこの島にやってくる。
それまでに準備はできるだろうか。
[text by eclipseguide.net]
INFASパブリケーションズ刊